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陽だまりの仮面 -嘘-

第8章 夕陽と泪味 ②

昨日、花木君の唇が触れた場所が思い出すとその部分だけ熱が籠もる。



分かってる。



昨日のキスだって、“恋人ごっこ”の一貫だって事くらい。



“恋人としてしっかり演じてください”

だから、何の意味も持たないキスだって事くらい。

恋人ごっこの、例えば、ままごとの中の

『今日ご飯何にする?』

『んー、肉じゃが!』

みたいな会話と同じような感じのキスだって事くらい。


ちゃんと分かってる。



それと、もう1つ…―――――。



“琉愛なんて性格ブスじゃん”


“口悪ぃし最低な女だよね!”


“顔だけじゃん!いいとこって!”



“あたし”じゃ花木君の“恋人”にはなれないって事も、ちゃんと分かってる。



“琉愛?あんたいつまで演じんの?”


“あたし”じゃない、真逆の自分を演じてるから

花木君は今こうしてあたしの彼氏役をしてくれてるんだ。

いつもニコニコしてて、いつも優しくて可愛いあたし。

毒なんて吐かないし嫌いなヤツにでも愛想振り撒く。

NOが言えない日本人そのもので、何を言われても2つ返事で

『いいよ♪』

なんて笑顔で言って退ける、あたし。

実際のあたしとは180度違う“あたし”だから花木君は彼氏役をしてくれてるんだ。





……そんなあたしが……



彼女になんてなれるはずがないんだ………







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