『花は月明かりに濡れて～四つの恋の花～』第8章「三つめの恋花　　桜いかだ　其の壱　」　457ページ

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花は月明かりに濡れて～四つの恋の花～

第8章三つめの恋花　　桜いかだ　其の壱　

　頼まれた仕事をしている最中ですら、おれんのことを考えて、ついボウとしているのを、娘の美空に指摘されたことも一度や二度ではない。
　この十二歳の娘はまだ年端のゆかぬ割には存外に人の心を読むのに長けているところがあるのだ。
―おとっつぁん、いやねえ。何を魂を持っていかれちまったみたいに、ボウっとしてるのよ？