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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第8章 三つめの恋花  桜いかだ 其の壱 

 弥助がおれんの店をふと思いついて訪ねてみようと思ったのは、更に数日を経たある日のことだった。別に、あの日―町人町の紅白粉問屋の前で三笠屋の倅に絡まれたのを助けたときのことがいつまでも頭から離れなかったというわけではない。
 ―というのは、実は大きな嘘だ。あの日以来、弥助の心にあの女、おれんはどういうわけか、しっかりと棲みついてしまったらしい。

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