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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第1章 恋花(こいばな)一つ目~春の夢~壱

「ああッ、あの子が呼んでいる! 慎太郎が私を呼んでいるわッ。早く、早く行かなければ」
 なりふり構わぬ勢いで身を翻そうとする女を咄嗟に後ろから抱き止め、清七は女の耳許で大声で怒鳴った。
「おい、落ち着けよ。一体、何だっていうんだ?」
「放して、放してよッ。あの子が泣いているんだから、早く、早く行ってやらないと」

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