テキストサイズ

花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第1章 恋花(こいばな)一つ目~春の夢~壱

 と、女が探し物でもしているかのように、首を忙しなく動かした。
「慎ちゃん、慎ちゃん? 一体、どこにいるの? ねえ、慎ちゃん?」
「おい、お前、一体、何言って―」
 清七が女に言おうとしたその時、いきなり、女の形相が変わる。
 あたかも芝居の中で優しい女(おみな)の顔が怖ろしき夜叉に変化(へんげ)するかのように、女の美しい貌が一瞬にして歪んだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ