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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第1章 恋花(こいばな)一つ目~春の夢~壱

「あの子の泣き声がどこからか聞こえてくるような気がして」
「あの子―?」
 清七が問い返すと、女がふいに立ち止まった。つられるようにして清七も歩みを止め、女を振り返った。
 その瞬間、清七は眼を見開いた。
 女はボウとまるで魂を抜き取られでもしたかのように虚ろな眼で前方を見つめていた。

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