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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第1章 恋花(こいばな)一つ目~春の夢~壱

「行くぜ」
 声をかけてから一人で歩き出した清七の後ろを女は少し離れてついてくる。
 清七は少し進んでは、後ろから女がついてきていることを確かめながら、ゆっくりと歩いた。短い橋は、あっという間に渡り終える。
 橋のたもとまできた時、清七は二人の間に落ちた沈黙に耐えかね、ふと女に問うた。
「何だって、こんな夜更けにふらふらと出歩いてるんだ?」

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