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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第1章 恋花(こいばな)一つ目~春の夢~壱

「ああ、判った。お前さんの言い分はもっともだ。誘ってきたのは確かにそっちだが、考えてみりゃア、常識のある真っ当な女が真夜中にこんな人気のねえ場所をうろついたり、自分から抱いてくれと迫ってくるはずがねえ。大方、少し頭のイカレちまってる女だろうぜ。そんな気違い女とうっかり拘わり合いになってもなあ?」
 男は呟くと、丸顔を肘でつついた。
「俺は良いけどよ、お前は煩(うるせ)え嬶(かか)アがいるだろう?」

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