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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第1章 恋花(こいばな)一つ目~春の夢~壱

 「おっ、おお」と、全然所帯持ちには見えない丸顔の男がしまらない様子で相槌を打つ。
「とにかく、俺たちはもう行くわ。済まねえが、その女、何とかしてやってくれよ」
 二人の男たちは折角の酔いもすっかり醒めた風で、肩をすくめながら、そそくさと歩いていった。
 武家屋敷町の方に消えてゆく二人連れの後ろ姿を見送った後、清七はつと振り返った。

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