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やっと、やっと…

第9章 暗い闇の中


私はそれからしばらくの間
何も言うことが出来ず
ただ圭介に抱きしめられたままだった






ジャリッ――






その時、ふと

誰かが近づく足音が聞こえた










(人が、来ちゃうっ・・・)









そう思った時


私の背後から声がした








「おい」









ドキッ







胸が高鳴った








その声に圭介は舌打ちをしながら
私から離れた








「なんだよ」







そしてゆっくりと後ろを振り返ると



そこには智己が立っていた








「お前、いい加減に分かれよ」




智己は圭介に向かってそう言った








「あ?」







その言葉に圭介が低い声で答える







私は圭介と智己を交互に見る







「唯がどれだけお前と居ることで悩んでるか、分かれって言ってんだよ」







「黙れ」







「都合が悪くなると何も言わなくなるよなあお前は」






「黙れよ」







圭介は智己を睨みつけながら徐々に智己に近づいていた



(止めなきゃ・・・!)




そう思い、私は圭介の腕を掴み






「いいから、私は大丈夫だから…」




智己に言った





(私が、耐えれば…)




私が耐えれば
智己に大丈夫だと言えば

もうこれ以上圭介に恐怖を感じることもなくなるし、
智己に心配をかけることもない




そう思っていた






「なあ唯」




智己が私に言う




私は下を向き智己の方を見ようとしなかった




見たらきっと逃げたくなるから


智己の優しさに甘えたくなるから






だから私は前を向かなかった


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