テキストサイズ

やっと、やっと…

第9章 暗い闇の中





俺は前を向いたまま圭介に言う





「だから、何もないって…」




圭介も前を向いたままのようだ





「何もないわけないだろ

じゃあなんで最近唯は
あんなに元気ないんだよ」




「・・・・」




まただ
答えない



「答えられないことでもあったのかよ」



「・・・・・」



「おい、傷つけたって

どういうことだよ」



苛立ちを抑えながら
圭介の方を向く




「俺は何もしてない」




圭介は相変わらず前を向き無表情だ




「だったらなんで…」



なにも言わない圭介に
次第に苛立ちが増す




「唯は否定しなかった…


お前のことか聞いたら
あいつは否定しなかった」




その言葉に
圭介が初めて表情をあらわにした


目を細め眉をひそめる




「お前、唯に近づくなって言っただろ…?」




「近づいたらどうなんだよ」






圭介が立ち止まる



それに合わせ
自分も立ち止まった







そして圭介は
首を傾げる




「さぁ…、どうなるかな…」




圭介の目の奥が
圭介の意図がわからない


何をしようとしているのか





だけど、直感的に

危ないと、

そう思った




「だったら俺が、唯がこれ以上

傷つかないように守ればいいだろ」





「唯は、傷ついてなんかいないよ

唯は俺のこと好きだから、
お前の言う事なんか聞かないだろうなぁ」



苛立つ俺とは対照的に
圭介は堂々としていて余裕があった




「唯は、俺の言う事しか、聞かないよ?」





圭介は、ニヤつきながら言う




体が震えて鳥肌が立った

こいつは本当に、
何を考えてるのかわからなかった





(唯を守らなければいけない)






ただそれだけは

はっきりと分かった






ストーリーメニュー

TOPTOPへ