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やっと、やっと…

第9章 暗い闇の中


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「俺は、何をやってんだ・・・」




更衣室の壁に頭をつけ
自分の言った言葉を思い出していた








一緒に帰った日は
思わず唯を抱きしめていた





一線は越えないようにしてきた




唯のことはずっと好きだった


その気持ちだって抑えてきたのに






あの日の圭介への苛立ちと
唯の顔の辛そうなのを見たら

我慢ができなくなっていた




そんなことを考えていたら
練習着に着替える手も止まっていた





(早く部活行かないと・・・)




そう思いながらも
あの日の唯の顔も
さっきの唯の顔も

頭から離れない






圭介と何があったのか
気になるけど唯は何も言ってはくれない





あいつの嫉妬から
俺のことを避けていた事は分かる



(けど…)


あそこまで人が変わったように
あんなに明るかった唯から
笑顔が消えた




何か、
絶対何かあったはずだ




誰にも言えないような事が…






唯から無理に聞き出すのは無理だろう








あの日あいつは否定しなかった



“唯を傷つけた”



否定しないどころか
むしろ、目を逸らし
何も言わなかった

いや…、言えなかったんだな





(だけど、傷つけるって

どういうことだ?


ただの喧嘩ではないだろうし



まさか、



いや、まさかな




彼女に手を上げるなんてな



それは、ないよな…)



考えれば考えるほど
頭は混乱していく







(取り敢えず今は
唯をなんとかしてやらないと…)






やっと服を着替え
グラウンドに出る






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