
やっと、やっと…
第9章 暗い闇の中
「圭介だろ?」
「え…」
「はぁ、やっぱりか…
何があったかは聞かない
どうせ聞いても唯は答えないだろうし」
智己は少し笑って言った
智己が歩み寄ってくる
私の机の前に立つと
私と目線を合わせるようにしゃがんだ
「なぁ、もうそんなに
我慢する必要ないんじゃないの?」
俯く私の顔を覗き込む
「唯こっちむいて」
頬をつかまれ
前を向かされる
その時の智己の顔は
あの日の帰りと同じ
切ない顔をしていた
「・・・っ智己」
顔を上げた私の髪を
智己が優しく撫でた
しばらくの静寂が流れる
私を見つめながら髪を撫でる智己を見ると
なんだかいつもと違ってドキドキした
それに、不思議と沈黙も苦痛ではなかった
昔から仲が良いからなんだろうか
智己の手が離れる
「唯、あのさ…」
