
やっと、やっと…
第9章 暗い闇の中
「お母さん、行っちゃったね・・」
そう言いながら圭介が笑う
(どうしよう・・・)
「こっちおいで」
震える足で圭介の元へ向かう
「じゃあ唯、触りにくいから脱いで」
「――っ」
私は無言で首を振る
「言うこと聞けないの?」
圭介が私を見上げながら睨む
「そんな脱がせにくい服着てるから、早く自分で脱いでよ」
私はタートルネックのニットを
着ていた
あの日から
首の跡を削った傷を隠すために
休日はなるべく首まで隠れるものを着ていたし、学校に行くときはバレないようにファンデーションなどで隠していた
傷はもう消えていたけど
不安でずっと隠していた
「唯、早く」
(あの日みたいには・・・)
私はニットに手をかけ
ゆっくり脱ぐ
「・・・っ」
恐怖で呼吸さえも震える
