
やっと、やっと…
第9章 暗い闇の中
「・・っえ、とも・」
「俺は、唯が辛そうなのなんて
見てられないよ」
智己の広い胸に抱かれると
変に意識してしまう
「智己・・・?」
「唯・・」
ギュ
智己の腕に力がこもる
「俺に・・・
いや、なんでもない」
(え?今何か言いかけたよね?)
「・・どうしたの?」
「何でもないよ」
(気になる・・・)
ふと
自分達の今の状況を考えた
ここは外で
学校の近く
そこで抱きしめられている
誰が見てるか分からない
「・・ちょっと智己離れて
誰かに見られちゃうよ」
私は離れようと身じろぎする
「やだ、大丈夫だから」
「だめだよ、誰か来ちゃう」
「このまま、もう少しだけ・・」
智己の掠れた低い声に
身じろぐのをやめてしまう
「智己・・・」
温かい大きな腕が心地良い
暫くすると腕の力が弱まり
体が離れた
「いきなりごめん」
「だい、じょうぶだよ」
気まずい空気が流れる
「じゃあ行こっか」
前を向いて歩き出す
「話したくなったら
何でも言えよ」
私の方を向いて智己が言った
「うん、ありがとう」
笑顔で智己に答える
「お、おう・・」
智己は目が合うと
すぐに顔を前に向ける
「あと・・・」
智己が眉をひそめる
「圭介とは、離れた方がいい」
