テキストサイズ

秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第4章 心のゆくえ

「黙れ! そなたは、この私が嘘を申していると言うのか」
「そのようなことは申し上げてはおりません。ただ、大妃さまが仰せになるような事実はないと、そう申し上げているだけにございます」
 大妃が紅に染め、美しく整えた爪の先を口許に当てる。唇も鮮やかな紅が引かれ、到底十五になる息子を持つようには見えない若々しい美貌であった。切れ長の色香漂う眼許辺りが王と酷似している。眼尻もうっすらと紅が刷かれていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ