
イケない同棲生活
第6章 犯人追跡?
「うん、異常ないわ」
「どーも」
資料を隈なく見て、ヤツに返す。
なんか私ベテランの上司みたい。
そんなことを思いながら椅子を回転させてパソコンに向き直る。
と、
「先輩」
「うぉっ?!なに?!」
回転させたばかりの椅子を、後ろからまた回転させられ…。先程と同じ、宮島楓と向き直ることに。
遠心力のせいで頭がぐわんぐわんして気持ち悪い。
「酷い顔ですよ今」
「…あんたがそうさせてるんデショ?」
栗色の髪と同じ、茶色っぽい瞳を細めて笑う宮島楓。
怒ろうと思ったけど、そんな無邪気に笑われたら怒る気もうせた。
「で、何?」
「あの、今日お昼時間あります?」
けれど。
宮島楓の唇から零れたその言葉に、思わずはっと息を飲んだ。
ドクンッと、大きく心臓が跳ねる。
「あると、思うけど…」
これは―――…。
ちら、と隣のデスクを見るも、彩織は運悪くいない。
先程までいたはずの真弘も、逃げたのかオフィスにいなくて。
つまり、野次馬もいないということで。
ほとんど二人きり、というこのオフィス内で、ただ私の心臓の音だけが、大きく響いている。
