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そして僕等は絡み合う

第5章 南野 昴の場合

「はいぃぃぃっ!」


正直この想いは誰にも語れる人が居なくって、ずっと秘めていた気持ちが、活火山の如く噴火し始めた。


俺は興奮気味に拳骨を作った両手でファイティグポーズを取り、身体を前に乗り出す。


「へぇ~凄いね~!」


ニコニコと笑っている高橋さんは、指先でぶら下げながら缶ビールを口元に運んだが…


ん?あれ?


高橋さんは楽しそうに同調してくれたけど…
細めた目の奥は、凄く冷静なものを感じるのは…

俺の錯覚だろうか?


基本的、動物的感で生きてきた俺は、小さな事に余り拘らない性分で、この感覚も一瞬にして消えていったんだ。


そして…


ホロ酔い気分も相俟って、独壇場の様に俺は東さんの事を語っていく。


真面目な人見さんは、俺の熱弁を正座しながら真剣に聞いてくれている。


高橋さんはやはり売れっ子モデルなだけあって、時たま携帯が鳴っては立ち上がって隣の部屋に行ってしまったりして


「うんうん!それも持って行きたい…俺のもだけど…ツカサの分も用意して…大丈夫…絶対連れて行くから…」


少し大きくなる高橋さんの声が、壁越しに少し聞こえた。

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