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身代わり妹

第7章 喪失

「部屋を貸すのには条件があります。秋村病院で働く事……掃除くらいなら出来るでしょう?」

成り行きを黙って見ていた事務長が口を開いた。


「は? 私に働けっていうの?」

美優の母親は事務長を睨む。


「当然です。ここは秋村病院で働くスタッフの寮です。タダでここには住めない」

「美優の働いた金があるだろ⁉︎ 」

「確かに今月分の家賃はもらってます。それなら、来月には出て行ってくれますか?」


冷静な事務長の言葉に、美優の母親は苦々しげに唇を噛む。

そして、くるりと振り向き笑顔で凌太を見た。


「凌太さぁん、私は美姫の母親よぉ? 将来のお母さんでしょ?」

ああ…美優……。

貴女が心配した通り、次は凌太に集るつもりよ。

それを知ったら、貴女は傷付くでしょうね……。



「……美姫とはもう終わってます」

「え⁉︎ どういう事⁉︎」

「治療拒否で脅されて付き合ってただけ。大学病院へ行けば関係ない」


私も初耳だった。

そっか……無事美姫さんと別れられたのね。

これで想い合う2人を邪魔するものはなくなったのに、肝心の美優がいないなんて……。



「そんな‼︎ 美姫の命をなんだと思ってるの⁉︎ 」

ホッと胸を撫で下ろす私と違って、

美優の母親は怒りで顔を真っ赤にして怒鳴った。


「あんたこそ! 美優を何だと思ってんだよ⁈ 」

凌太の本音だろう。

本当に美優が好きなんだね。


「あー、凌太さんは美優が好きなの? だとしても変わらない。私は美優の母親よ?」

勝ち誇ったような顔をする母親に、私も凌太も呆れてものも言えなかった。


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