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不器用なタッシュ

第4章 シエロ

展示スペースは、ファッションビルの一角だったから、20時には閉店する。


片付けも特にないので、安岡は妙な気を回して


「俺後で追っかけるから、二人先に行っててよ~。」


ニンマリ笑う安岡に、俺は舌打ちし、渡辺香織は赤くなっていた。


しゃあない、待たせてたしな。


「渡辺さん…行こうか。」


「は、はい!」


緊張が伝わってくるな…そんな大層な人間じゃないんだけど…怖いのかな?


チラリと見下ろすと彼女の口元は…何だろうかムニムニしている。


どうやら笑いを堪えてるみたいだ。


何かちょっと…くすぐったいな。


彼女が俺の前に初めて現れてから、まだ数ヶ月しか経ってない。


いつもだったら、とっとと手を出す俺も、やたら気を使ってくれる彼女には、それじゃあいけない気がしたから、アーティストとして成長して応えたかった。


そんな風に思えたのも、不思議だけど。 

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