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不器用なタッシュ

第4章 シエロ

作品そのもの?


ポストカードの時って!?どう言う意味だよ。


「そのもの?」


彼女は微笑みながら、何かを思い描く様に


「複雑そうで、寂しいそうで、面白くて、結構クセが強いけど、奥底は優しい…感じかな…。」


その表情には、何の計算も下心も無くて、思ったままの言葉を言っているんだ。


トックン…トックン…トックン…。


次々に鮮やかな色彩が放たれていき、胸を奥から沸き上がって、拡がる。


俺は目を見開いて、固まった。


ナンダッテ…。


まるでこの作品を描いてる時に、そばで見守って居たかの様に、見透かされる。


「ごめんなさい!偉そうにベラベラとっ!」


俺が、怒ったと思ったのか青ざめている。 


「ん…あぁ…全然。仲間内以外で、ここまで具体的に言ってくれる人いないし…。作品の感想を聞けるのは、アーティスト冥利に尽きるよね。」 


正直な気持ちだった。


世の中の人が、色んな作品を純粋に評価して奥底まで観てくれたら、もっと違う世界に繋がっていくんじゃなかろうか。


何より俺自身が、変われるんじゃないかとすら、思えてきた。 


俺はいつになく、穏やかに微笑んでいた。


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