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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第20章 番外編第三話【秘恋~背徳の恋~】 睡蓮の池 

 その視線の底に潜む絶望と迷い、懊悩は深く、光円は恐怖よりも先に痛ましさを覚えた。「光円さま、どうか私と―」
 と、ふいに織部が光円の手を取った。
 愕きのあまり声も出ない光円の華奢な手首には、二重になった数珠がかけられている。それは、彼女が仏の道に仕える浄(きよ)らかな尼僧であることを示していた。織部がその細い手首を更に力を込めて握ろうとした時、襖の向こうから聞き慣れた声が響いた。

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