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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第8章 第三話【波の音】 予感

 幸は馬車に揺られながらうとうとと浅い眠りに落ちた。しかとは判らなかったけれど、丸一日以上は走り続けたように思う。
 それまで物凄い速さで走ってきた馬車がふいに突然止まった時、幸は閉めきった馬車の中にかすかに海の匂いが流れ込んできたように思った。空気にわずかに混じる潮の香りと共に遠くからひっそりと響いてくる波の音―。

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