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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第8章 第三話【波の音】 予感

 幸は亮平の意図が判らなかった。
 馬車はスピードを上げて、ひたすら走り続けた。一体、亮平がどこへ向かおうとしているのか、幸に判るのはただ一つ、それだけであった。途中、馬車は幾度か止まった。その度に亮平は腕だけを馬車の中に差し入れ、握り飯と茶を幸に渡す。だが、幸はそれらに一切手を付けなかった。亮平はといえば、一体いつ眠り休むのか判らなかったが、幸に飲み水や食べ物を差し入れる他は、馬車は止まることはなく走り続けた。

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