テキストサイズ

空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第8章 第三話【波の音】 予感

 中には白い小さな貝殻がたくさん詰まっていた。静かに入れ物ごと振ると、小さな貝殻が触れあう涼やかな音がかすかに響く。幸はその中の薄紅色の美しい貝を手にした。そっと耳に押し当てると、波の音が聞こえるような気がする。
 ザザ―、ザー、どこまでも続く白い渚、砂を洗う波、澄んだ蒼空。今、幸の眼裏には紛れもなくかつて見た空と海がひろがっていた。それは鮮やかなほどの蒼一色の世界だった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ