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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第8章 第三話【波の音】 予感

 白っぽい蓋に薔薇の絵が描かれている小物入れの蓋を指でつまんで開ける。
 その絵は親友の弥生の良人である画家の手になるものだ。弥生は二年前、画学生と結婚した。女学校時代から付き合いがあった恋人であったが、貧しい家の生まれで苦労して美術学校を卒業した男だった。が、元々絵の才能はあり、弥生の父が画商をしている関係で、彼の絵も多少は売れ始め、この頃では少しは名の知れた新進若手画家となっている。この小物入れは浩三との結婚祝いにと二人が贈ってくれた大切な品である。

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