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月琴~つきのこと~

第1章 第一話【宵の月】 一

 それからというもの、小文の心の中から治助の笑顔が消えることはなかった。あの束の間見た笑顔の邪気のなさ、優しさが忘れられず、小文は日がな治助のことを考えた。妹の妙乃と連れだって通う琴の稽古のときも心は虚ろで、普段なら考えられぬ弾き間違いばかりしてしまう。

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