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月琴~つきのこと~

第1章 第一話【宵の月】 一

「あなたは?」
 小文は卯之助と向かい合って立つ若者に眼を向けた。年の頃は二十歳くらい、小柄な卯之助よりは頭一つ分高く、陽に灼けた精悍な顔立ちをしている。信濃屋では見かけない顔だ。
「こいつは先月入ったばかりの新入りで治助と申します」
 若者は小文に見つめられるなり、赤くなった。物も言えないでいる若者に代わって、卯之助が応える。

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