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月琴~つきのこと~

第3章 第二話 【月琴~つきのこと~】 一

 改めて夜空を見上げると、紫紺の空には相も変わらず銀の月が冴えた輝きを放っている。こうしていても、妙乃には小文が亡くなったとはいまだに信じられない。もっとも、姉の死は父が勝手にそのように世間に言い繕ったにすぎず、実のところ、どこかで治助と暮らしているに違いないのだ。
 突然いなくなった姉は実は、どこかでちゃんと生きていて、惚れ合った男と共に幸せに暮らしているのだと固く信じている妙乃である。

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