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月琴~つきのこと~

第3章 第二話 【月琴~つきのこと~】 一

 幼い頃、妙乃は美しい姉をかぐや姫だと信じ込んでいた。物心やっとついたくらいの頃、母が添い寝をしながら聴かせてくれたお伽草子の中の月の姫は紛れもなく美貌の姉であった。やはり、その想いは間違いではなく、姿を消した姉は月へと還(かえ)っていったのだと確信している。月には白兎(しろうさぎ)が棲んでいるというけれど、ならば、姉は月に還って得意の琴を弾いて兎に聞かせてやっているのであろうと思う。

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