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誠の華

第2章 小姓ってこんな感じなの?

斎藤一side~


時は遡り、数刻前ーーーー



着れないと呟いたコイツを部屋に残し後にした



なんとか頑張って着ろと突き放した



せめてどう言う風に着るのか教えてれば良かったと後悔したのは部屋を出て外の壁に背を付けた時


再び麩を開けようとして思い直したのは着物の擦れる音が響いたから


一つ隔てた場所に無防備なアイツの姿を思い描く


再び壁に背を付け瞳を閉じると蘇るあの日あの瞬間



そしてアイツの笑う姿と真っ赤な血の海



麩の向こうの少女の笑顔と重なり胸が締め上がる



初めてその姿を見た瞬間、時が止まった


目を見開き硬直したのはついさっきの出来事


そんな俺の姿に気付いた者は誰も居なかった



頭では解ってた


麩の向こうの少女は違うと



俺の知ってる人物では無いと.....




解ってても、胸の疼きはどうしようも無く、その姿が動いてるというだけで歓喜して、光が灯ったようだった



大きな黒目がちな瞳も、プルンと形の良い唇も、小さな顔も手も華奢な体も



俺が好きだった長くサラサラな茶色い髪も.....




何一つ同じなのに...........







その唇が名乗った名前は全然違った




違うと解った瞬間、暗闇に落とされた気分になった


黙って話しを聞いた


時を渡って来た小さな少女は泣いた



そして困った様に笑い、少しも怖くないのに頬を膨らませ真っ赤になって可愛らしく怒った



そんな姿に胸がザワザワと煩く波打った


その姿が俺の全く知る一人の少女と被ったから



美代.............



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