
パパとママのタカラモノ。
第4章 出産。
私の両腕は
痛みしかなかった。
点滴が上手く入らないのは
看護師さんが悪いんじゃない。
私の血管が細いせいだ。
けどこれは私のせいじゃない。
私の家系はみんな血管が細い。
「あ‥あった!!師長、ありました!!」
入院してからも
一般病棟に移ってからも
ずっと担当の看護師さんが
声を上げた。
「あぁ、良かった。これが最後になりそうね。見たところ、足も手の甲にも、太い血管はなさそうだし。」
要するに、最後の血管って訳か。
「師長、お願いします。」
「あなたがやりなさい。この子の担当看護師はあなたでしょう。」
私、一応
大人なんですけど(´pωq`)
「えっ、でも‥。」
奈央「看護師さん、お願い。信じてるから‥。」
躊躇する看護師さんに
私が更にプレッシャーをかけた。
「ほら、頑張って。」
「は、はい。師長。」
病室内の空気が張りつめる。
看護師さん達の視線が一気に私の
腕へと集まる。
「斎藤さん、チクッとしますよ‥。」
その言葉を聞くのも
最後でありますように。
まぁ『チクッ』ではなくて
『ブスッ』の方が表現は
正しいと思うけどね。
奈央「ひゃッ‥痛ぁ‥!!」
「は、入りました!!!」
奇跡が起きた。
「ッしゃあ~!!」
「斎藤さん、頑張ったね~!」
「見守ってる親の方がヒヤヒヤしたわぁ。」
「痛かったよねぇ。斎藤さんごめんね‥。」
智ちゃんを見ると、
下唇を噛んで泣きそうな顔をしてる。
奈央「時間‥間に合いますか??」
「大丈夫ですよー。でもそろそろ、手術室のお迎えが来る頃かなぁ?‥あ、来た来た。」
ストレッチャーを押した
担当医の先生が登場した。
