
パパとママのタカラモノ。
第3章 新生活。
翌朝。
昨日悲鳴を
上げていた妊婦さんは
青白い顔でカーテンを開けて
「昨日はお騒がせをして、ごめんなさい。」
とだけ言った。
奈央「陣痛、治まりましたか?」
と聞くと、
「まだ少し痛いけど‥もう平気。」
そう言って笑顔を見せてくれた。
それでも相当辛いのか、
「ごめんなさい。今日一日はゆっくり休みます。」
そう言ってまたカーテンを閉めた――
朝の5時にお腹の張りを測ると
「もう大丈夫。」
だと看護師さんから言われた。
朝食時には携帯に着信があって
智ちゃんからだった。
慌てて掛け直すと、繋がらない‥。
暫く待っていると、また着信。
奈央「おはよー。どしたん?」
智也「事故った(笑)」
奈央「えっ!!身体は大丈夫なん!?」
智也「身体は無傷。車は廃車(笑)」
奈央「は!?廃車!!?」
で、無傷!?んな馬鹿なこと‥。
智也「起きたら8時半前で完全に寝坊で、140kmで飛ばしてたら水溜まりでスリップして、そのまま2m下の田んぼに落ちて、反動で1回転して、また道路に戻った感じ(笑)」
奈央「‥‥‥。」
私が何も
言い返せずに黙っていると、
智也「あと30cmで、電柱に衝突してたらしいから、ギリギリセーフ。」
奈央「衝突してたら‥、どうなってたの??」
恐る恐る聞いてみると、
智也「死んでた。って警察は言ってた(笑)兄ちゃん命拾いしたな!って言いながら、顔ひきつってたしな(笑)」
死、んでた‥??
何でそんなに笑いながら
誇らしげに言うわけ!?
奈央「何で笑えるん!?あんた親になるんよ!?無茶せんでって、あれほど‥!!!」
智也「分かってる。でも俺は死んでない。生きてるし、幽霊でもない。」
何、言ってるんだか‥。
奈央「まぁ無事なら良かった‥。」
智ちゃん死んじゃってたら
妊婦の未亡人になるとこだった。
智也「とりあえず、パトカーで会社まで連れてってもらうわ!―あ、今夜はそういう訳(廃車)で会いに行けれんけど、おとん行く思うから。」
もう、何でもいいよ‥。
朝食は半分以上残した。
