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理想と偽装の向こう側

第18章 永久と再会

「わぁ~!先輩、スミマセン!ぶつかった拍子に落ちちゃいました!」



細野が本当に、泣きそうな声で言ってきた。



「え…?」



床には、光花が初デートで買ってプレゼントしてくれた、ガラス細工のペーパーウェイトが落ち、ウサギの耳の部分が欠けていた。



ドクンッ…。



「小田切!今直ぐ病院へ行けよ!後は、やっとくから!」



滝島が焦って言ってきた声で、俺は弾けるように飛び出していく。



「ごめん!任せた!」



会社を出て、タクシーを捕まえ飛び乗りながら行き先を伝える。



お義母さんに電話をかけたら、直ぐに出てくれた。



「すみません!着信気付けなくて…光花、なんかありましたか!」



『あぁ…小田切さん!容態が急変して…今、危篤状態で!』



危篤状態…。



「分かりました!今、病院に向かってますので!」



『はい…。』



携帯越しに、お義母さんの泣き声が聞こえた。



光花…持ち堪えてくれ…。



両手を強く握った手の甲には、爪の痕が付くほど食い込んだ。

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