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理想と偽装の向こう側

第17章 希望と絶望

看護師さんは、お義母さんをチラリと見やると



「はい…娘のフィアンセなんです。来年、結婚予定で…。」



「分かりました。どうぞ、お入り下さい。」



医師の部屋に案内され、ドアが開く…。



「ガチャリ…。」



「どうぞ、お掛け下さい。」 



椅子に座るよう促され、お義母さんを前に、俺は少し下がって座った。



医師は、レントゲンを見ながら病状の説明に入る。



「娘さん…最近、胃の調子が悪かった様ですね。」



「最近?昔から弱かったですが。」



「先日、胃炎だからって薬処方してもらってたみたいですが…胃炎じゃないんですか?」



俺が質問すると、医師は



「これから順番に説明させて頂きますね。先ず病名は『スキルス』です。」



「スキルス…?」



どっかで、聞いた事はあるが、詳しくは知らなかった。



お義母さんを見ると、眼を細め黙っていた。 


「『硬癌』と言われてまして…胃が硬くなる事から付けられたんですが…悪性の『胃癌』です。」



えっ…悪性…。



それから淡々と医師は一通りの説明をし最後に



「転移してるかは、精密検査してみないと分かりませんが…吐血は末期症状の一つでして…もって余命半年かと…。」



今…なんて言った…。



余命…半年…?


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