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理想と偽装の向こう側

第14章 時限爆弾

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「香織ん!」



小田切さんと待ち合わせした居酒屋に、一時間遅れで着いた。



小田切さんは、私の姿を見付けるなり物凄い心配そうな表情で、駆け寄って来た。



顔を合わせ辛い、下を向いたまま話しかける。



「小田切さん…ごめんなさい…。」



「香織んは、悪くないよ…。」



ううん…私が悪い…。



自分の甘さが、小田切さんを巻き込んだ。
向き合いきれなかった弱さが、嘉之を狂わせた。



「香織ん…とりあえず何か食べよう…。」



小田切さんは、私の背中を押しながら店に入る…ふと、滝島さんの言葉が蘇った。



『金曜日…小田切を一人にしないで欲しいんだ。』



そうだよ…滝島さんに頼まれてたのに…。



「お腹、空きました!チーズオムレツ食べたいな!」



その言葉に小田切さんは



「メニュー片っ端に頼む?」



と、笑いかけてくれた。 



「それは、ちょっと食べきれないよ!」
「ははっ!だよね!」



いつもの小田切さんなら



『香織んのいいとこ見てみたいな!』



くらい言いそうなんだけど…今日は察してくれてるんだよね。



そんな小田切さんが、大好きです…。



でも、それが嘉之を暴走させる。
落ち着くまで、しばらく距離を置くしか…。



私は、決意を固めた。



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