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理想と偽装の向こう側

第14章 時限爆弾

カチャ…。
そんな音が聴こえるようだ。
枷がはめられた。



「あ…指輪…。」



「俺のこと…嫌いなの?」



顔を覗きこみながら、たまに見せる泣きそうな表情になっていた。
この顔を見ると、可愛くて仕方ない…と、前は何でも許してしまいそうだった。



でも今は…嘉之の策略の一つにしか思えない。



「き、嫌いとかじゃなくて…。」



「俺も…基盤作るのに必死だったからさ。距離作って、ほったらかしにしてたから、香織を不安にさせたんだよな。」



「え…。」



そうかな…距離や時間じゃなかった…。



「でも…香織がずっと見ててくれてると思ったから、辛くても頑張れたんだよ。」



「嘉之…。」



薬指から、ズルズリと身体中に蔦が巻き付いてくる感覚…。



「裏切らないよな…香織?」
「裏切る?」



「俺たちの6年…簡単に壊せないだろ?いいの…それで?」



…あぁ…嘉之の声が私の自尊心を揺り動かす。



このままだと、抜け出せない!



「私…もう行かないと…。」



辛うじて言うと



「最後…だよ。」 
「あっ…。」



「小田切との最後の週末…楽しんでこいよ。逃げても…。」 



嘉之は、小さく口を動かし



『追いかけるからな…。』



「バタンッ!」



私は車から飛び出し、小田切さんの所に駆け出した。



どうしよう…絶対、逃げられない!


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