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理想と偽装の向こう側

第14章 時限爆弾

「ピチャッ…。」



嘉之が、私の下唇を吸いながら、離した。



一分くらいだったのに、凄い長く感じる…地獄のようだ…。



「ふっ…ふっく…。」



涙が溢れだし、情けなくも泣いてしまう。
そんな私を横目に、



「小田切さん聴こえた?香織の声、可愛いかっただろ?」



『………。』



小田切さんは、無言だった。



「あんたじゃ一生聴けなかっただろうからさ…せめてもの餞別だよ!じゃぁね~!」
「ガチャ!ツーツー…。」



嘉之の満足そうな横顔が、なんとも腹ただしい。



「なんで…なんでこんな酷いこと出来るの!小田切さん関係ないんだよ!」



「あぁ…でも、香織には関係なくはないだろ?」



ドクンッ…強く脈打つ…。



もしかして…気付いてるの…?



「小田切がなんとも思ってなくても、香織はあいつのこと気になってんじゃねぇの?」



「な…なんで…そんな根拠…。」



嘉之は、薄ら笑いながら



「ないの?言い切れる香織?」



ドクンッ!ドクンッ!



「あっ…違っ…。」



違わなくない…本当だ…。
嘉之はとっくに気付いてたんだ。



「小田切なら、選り取り見取りで女には困らないだろ。香織は…俺だけ見てればいいんだよ。」



放心状態の私に嘉之は身体を近付けて、左手の薬指に指輪をはめる…。


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