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理想と偽装の向こう側

第10章 信頼と疑惑

私が嘉之のために良かれと思ったことが、逆に彼を苦しめてるの?



「嘉之…話…んっ。」



私の頭を支えながら、唇を重ねてきた。



私は、嘉之の服をギュッと握り、なんとか彼を励ますことを考えた。



何度も向きを変え、重ねていく内に、落ち着いてきたのか、抱き締める腕の力がなくなった。 



「嘉之…。」
「…腹減ったな…。」



そう言って、少し力なく笑った。



「う、うん…作るよ!ちょっと待ってて。お風呂でも入る?」



「…そうする…。」



「お風呂の中で、寝ないでね!」



「寝てたら、起こせよ。」



いつもの不敵な笑いで、バスルームに入いくのを見守りながら、私は正直足が震えていた。



どうしよう…この企画、進めていいのかな…でも今更、止まることは絶対ないし、出来ない…。



私は、バラバラになったデッサンを眺めながら、泣きそうになった。


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