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理想と偽装の向こう側

第10章 信頼と疑惑

ズカズカ奥に進む嘉之を追っかけながら、必死に話しかけた。



「あ…あのね…余り食べてないかなって思ったから…。買ってきたモノよりは、いいかと思うし…消化良さそうなの作るよ!何かリクエストあったら…」



「香織っ!」 



えっ!?



ドサッと、スーパーの袋を落としてしまった。



「香織!香織っ!…お…り…。」



嘉之は悲痛な声で、私を抱き締めていた。



「よ…嘉之…?」



胸にすっぽり塞がれてしまう瞬間、嘉之の背中越しに、無数に破り棄てられたデッサンの山があった。



そう言えば昨日、電話で来週までにって…なんか打ち合わせしてたよね…締め切り…?



一気に罪悪感が、押し寄せてきた。



もしかして…トランスとの企画のせい…?



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