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?…好き…?

第35章 不安?…

もう休憩時間は終わってしまう。
俺と彼女は、灰皿を間に、斜向かいに座っていた。
俺は一度立ち上がり、彼女の左側から近付き、小さな声でも聞こえるくらい傍に寄り、しゃがみ込んだ。
「あの…さ…、頼みが…あるんだ…けど…」
彼女の左耳に向かって、小声で言った。
「ん?」
「何も…言わずに…、ハグ…して…くれない…?」
デカイ図体をして、俺はすっかり只の甘えん坊になってしまった。
彼女は、たったの1つではあるのだが、歳上のお姉さんの貫禄で、何も言わずに自分の左腕を、俺の太い首に巻く様に廻してくれた。
彼女の左の頬と、俺の左の頬が、触れ合う寸前な位だ…
何日ぶりだろう…
彼女がこんなに近くに…
休憩時間が終わる…
俺は、彼女の細い身体に、両腕を廻した。
………
何もかも忘れた。
何故だろう…?
この気持ちは…?
ホッとする…
温かい…
心が…安らぐ…
………
こんなに彼女と密着しているのに、いやらしい気持ちにはならなかった。
それなのに…
何故だ…?
無性に…
Ki…ss…
した…い…
どうしたんだ…
俺…
思った事が、口から飛び出してしまった。
「ちゅー…、したいよ…」
彼女の左耳に、さっきよりも小さな声で
囁く…
だが、彼女は苦笑いをして、右手で上を指差す。
確かに、上の階の喫煙所に、人の気配がある。
だから何だ?
この小さな囁きが、上の階に聞こえるとでも?
Kissをしたら、真上の階から床を突き抜けて、見えるとでも?
そんな訳がない。
又…
拒まれた…
突然、現実に引き戻された。
あの安堵の気持ちが吹っ飛んだ。
彼女から、そっと離れる。
「ハァ…、また…、拒まれちゃったぁ…」
「アタシ、もうばぁさんだからぁ…」

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