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?…好き…?

第35章 不安?…

彼女は、あまり大きくはない声で言った。
「それは、こっちがお願いしたいぐらいよぉ、こんなばぁさんで良かったらぁ」
彼女の手を握った俺の手を、弄ぶ様にしながら。
会話は成立している。
だが…
俺の中では、何かが違う様な、そんな感じがした…
「そんじゃ、またね…」
しっくりこない、とでも言えばいいのか…
『またね』という語尾が、尻窄みになってしまっていた…
「うん、じゃあねぇ」
彼女は、至って何時も通りだ。
俺は、車のロックを解除した。
彼女は、車を降りた。
俺は、彼女がドアを閉めたのを、無意識に感じ取ると、軽く手を上げ、車を出した。
多分、彼女も手を上げていたと思う。
楽しかった…
彼女との買い物…
美味しかった食事…
2人偶然同じ物を注文し、熱々でなかなか食べられないね、なんて言いながら…
ついさっきの事を、まるで昔懐かしい話の様に、思い出していた。
そしてまた同時に、考えてしまっていた。
何で彼女との時間(とき)は、こんなに楽しいのだろう…?
どうして…
こんなにも大切に思えるのだろう…?
また悪循環が始まった。
彼女と別れた後は、何時もこうなってないか…?
俺…?
妻を裏切っている罪悪感?
違う。
確かに罪悪感は有る。
無いと言えば、間違いなく嘘だ。
でも、そうじゃない。
考えてしまうのは、そこじゃない。
そのせいじゃない…
何なのだろう…?
この感じは…?
何でこんなに、気になる…?
どうしてこんなに、悩んでしまう…?
……………
家に着いた頃、携帯が震える。
俺にしては珍しく、ロクに誰からかも確認せずに、電話に出た。
さっきまで、彼女と一緒に居た。
彼女の筈はないし、気にも留めなかったのだ。
「ハイ、もしもし」

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