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?…好き…?

第32章 ドライブ…

それでも俺は帰るのだ。
妻を愛しているから。
その妻との間に産まれた、宝物達が居るから。
大切な愛する家族の元へ、帰らないワケがない。
俺は帰った。
又、何時も通りの時間が始まった。
何時も通りの…
何時も…
通りの…?
彼女との時間(とき)は…?
確かに、何時もとは違う。
寧ろ、それが普通、何時も通り、であってはならないだろう。
でも…
今、俺にとって、彼女との時間(とき)は、何なのだろうか…?
その、時間(とき)は…
とても…
とても大切に思える…
とても特別に思える…
何故、そんなにも特別な時間(とき)なのだろうか…?
……………
それから又、幾日も、いや、一月以上も、彼女との時間(とき)は無かった。
相変わらず、彼女は子供が熱を出したりで保育園に預かってもらえず、休む事もしばしばだったし、何日も会わない事さえ、ザラにあった。
仕事に行き、家に帰り、毎日がごくごく当たり前に過ぎてゆく。
それが普通だ。
それが当然なのだ。
しかし、職場で彼女に会う。
何日も会わない事さえあっても、全く会わないワケではない。
嫌だったとしても会うのだ。
会ってしまうのだ。
会ってしまうと…
俺は…
会ってしまうと俺は…
何なのだろう…?
この感覚は…?
彼女の歩く後ろ姿。
彼女の働く横顔。
彼女の煙草を吸っている仕草。
そんな色々な彼女を…
気が付くと…
俺は見ている…
……………
そんな俺を余所に、彼女はごくごく当たり前の、ごくごく普通のお喋りをする。
何時も。
何時も何時も。
だからだろうか?
だんだんと、彼女が遠ざかって行く気がした。
何時かの様に、彼女から手を握ってくることも、擦り寄ってくることも、全くないのだ。
俺は、彼女の手さえ握れなくなっていた。

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