テキストサイズ

?…好き…?

第31章 帰り道…

たった1つ。
俺の記憶から消す事の出来ない明確なモノ。
忘れる事のない
『彼女の微笑み』
だ。
それはハッキリしている。
どうしてこんなにも、あの日・あの時の事が、記憶の中に、鮮明に焼き付いてしまったのだろう…
確かに、彼女と初めて唇を重ねたあの日の、携帯の灯りにボンヤリと映し出される、カワイイと思ってしまった彼女の横顔も、よく覚えてはいる。
しかし、それよりも何よりも、あの日・あの時の
『彼女の微笑み』
は、ハッキリ思い出されるのだ。
いくら最近の、印象的な出来事とはいえ、気が付けば、もう1年以上も前の事だというのに。
ほどいた黒髪。
優しく下がった眉。
大きくはないが、二重瞼の円らな瞳。
小さくてまあるい鼻。
程好く肉の付いた頬。
薄くも厚くもない唇。
その唇を、少しだけ開き、僅かに歯を覗かせて、微かに笑った口元。
そして、その全てを、バランス良く保つ滑らかな輪郭…
見慣れている筈の女性の顔が、こんなにも魅力的に感じる事があろうとは、思いもよらなかった。
何度も言うが、彼女の顔立ちは、そんなに特別に美しいワケではない。
それなのに、だ。
俺には、とてつもなく可愛く、魅力的に映ったのだ。
決して忘れる事が出来ない
『彼女の微笑み』
が…
何故なんだ…?
どうしてなんだ…?
………
家族が大事だ。
妻が…
子供達が…
大切だ。
なのに…
なのに、彼女と少しでも長く居たいと…
彼女と1分でも長く過ごしたいと思ってしまう…
後悔しているのか。
俺は…?
彼女の帰り道に、付いていかなかった事を。
彼女からの、○○駅へのドライブを、断ってしまった事を…
行けば良かったのか?
妻や子供達、家族の元へと帰らずに…

ストーリーメニュー

TOPTOPへ