無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

どうやら、こちらの車で、煙草を吸わせてくれと言っているらしい。
「あぁ、構わないよ」
彼女と一緒に、俺の車に乗り込む。
「ハイョ」
俺は、灰皿を彼女に差し出した。
「アラ素早い、気が利くわねぇ(笑)」
「一服するんだから、これが無きゃ始まらないっしょ(笑)」
彼女は、例によって子供達の事や、旦那の事などを、話していたのだが、話を変えてきた。
「アタシさぁ、放射線治療で、日焼けみたいになって、皮がペロペロ剥けた、って言ってたでしょぉ」
確かに、産休が明けた直後くらいだったか、そんな話を聞いた。
「あぁ、言ってたね」
「それがねぇ、胸がまだらになっちゃってぇ…、そういう日焼け跡みたいなのって、どれぐらいで治るもんかなぁ…？」
「どうなんだろうねぇ…、普通の日焼けと違うんだろうし…、ま、アンタ、子供作ろうって時以外、旦那ともしないんだろ？誰に見せるでもなし、いいんじゃねぇ？」
『気にするな』
そういう意味で言いたかった。
貴女は胸がそんな状態であろうとも、充分魅力的な女性だと。
なのに…
言葉が見つからなかった…
そして…
そう言いながら、トドメを刺された気がした…
そんな状態で、俺とどうこうなんてあり得ない、そう感じた…
「まぁ…、そうなんだけどね…、嫌だなぁ…、こんなまだらなのぉ」
「大丈夫だよぉ、そのうち良くなるさ…」
俺に出来たのは、こんなありきたりの事を、言うだけだ…
ちくしょう…
なんで…
こんなに…
彼女に話す事一つで、考え込んじまうんだ…
もっと…
気の利いた事…
言ったり、したり出来ないのか…
俺は…