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?…好き…?

第26章 …kiss…

とは言うものの、外はまだ明るい。
本当は帰りたくなどない。
彼女のチビちゃんの迎えにも、一時間近くある…
だけど…
俺は、帰らないワケにもいかない…
妻が…
待っている…
「そろそろ…、帰らなくちゃ…」
「もう帰っちゃうの…?」
「そっち、まだ迎えまで時間あるんだろ?駅まで送ってくれるか?」
少しでも彼女と居たい…
「せっかくの…楽しい一時なのに…」
…!?
「楽しい…の…?」
彼女が、俺とこうしていて、楽しい…?
不安だった。
「楽しくないのっ!?」
「バカ…、んなワケないだろっ…、そうだったら…、ここまで来ないよ…、楽しいに決まってるじゃんか…、もっと…、一緒に居たいよ…」
昼前から一緒に居て、もう帰ろうかという今…
俺は、ようやく彼女の手を握り締めた…
「もっと…、時間が許されるなら…、ホテルにでも連れ込んじゃうトコだよ…」
「胸にマジックで落書きされてるんだもの、それはムリよ(笑)」
「分かってる、それくらいずっと一緒に居たい、って事だよ(笑)」
治療で胸にマーキングされてなかったら、彼女は…?
正直、彼女の本心は、俺には見えなかった…
それを理由に、拒まれているんじゃ…?
怖かった。
手を握る以上の事は、出来なかった。
彼女は、俺とどうしたいの…?
いや、俺は彼女とどうなりたいの…?
駅に着いてしまった。
何も出来ぬまま…
「それじゃ、ありがとう」
「いいえ、こちらこそ」
どうしたいのか…
どうなりたいのか…
もう終わり…
そう思いもしていたけど…
でもやっぱり…
終わりたくない…
そう思い始めた自分がいる…
「またね」
そう言った…
「うん、またね」
彼女は答えた…
電車に乗り、思いに耽る…
『楽しい一時なのに…』
彼女は俺と過ごして、楽しい…?
『楽しくないのっ!?』
俺に、楽しい、と思って欲しい…?
友人として…?
異性として…?

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