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?…好き…?

第24章 産後…

「そうはいかないわよ、いつも色々してもらってるんだし、頼んでおいて、お金無くてゴメンネ、さっき飲み物も買ってくれたし…、痛た…」
「だいじょぶかよ」
彼女は出産したばかり。
まるで普通な方が不自然だ。
「腰が…、麻酔が完全に切れてから、ちょっとね、今回は麻酔するのもギリギリになっちゃって、陣痛も味わっちゃったし(苦笑)」
「ムリすんな、休んどけ、もう嫌でも退院させられんだから」
「大丈夫よ、せめてそこまで…、エレベーターまでは…」
「ったくぅ、いいっつってんのに(笑)」
彼女はヨタヨタと、エレベーターまで付いてきてくれた。
下りのエレベーターが到着する。
俺は、乗り込んだ。
エレベーターの中と外とで、向かい合う…
考えてみれば、面会に2度来たわけだが、こうして…
正面から彼女を見ていなかった気がする…
それは、ほんの一瞬…
俺と彼女を遮る様に、直ぐに扉は閉まってゆく…
彼女は痛さを見せないかの様に、微かに笑った気がした…
「ありがとね…」
そう言った彼女に、俺は、無言で軽く手を上げた…
何故か、言葉が思いつかなかった…
『またね』も、『サヨナラ』も、言うことが出来なかった…
あの日、『アタシって…冷たいから…』
そう言って、あっさりと俺をコンビニに置いて帰った彼女…
でも…
診察のついでとはいえ、臨月間近のお腹を抱えて、会ってくれた彼女…
出産の為に入院したことを、自ら電話して伝えてきた彼女…
大切な『宝物』を、俺の腕に乗せてきた彼女…
手を握り返してきた彼女…
色んな事が、頭を掻き回す。

遊び…

恋人…

不倫…

友達…

出入口のフロアに着く。
面会札を受付に返す。
外に出ると星空が広がる。
車に向かって駐車場を歩く。
いったい俺は…?
どうして…

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