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?…好き…?

第22章 出産…

だが…
妻が気になる…
彼女と過ごした時間は、渋滞にハマったお陰で、本当に僅かだった。
でも、これ以上は…
「行きたい…」
言葉が詰まる…
「行きたいけど…、今日は…ムリだ…」
彼女の手を握ったまま、そう答えた…
「そうよね…ここに車置いて行けないしね」
「次に会う時は、もう赤ちゃん生まれた後かな…?」
話題を変えた。
というより、今日は無理だが、また会いたい、というアピールかもしれない。
「う~ん…そうねぇ」
気のない返事に聞こえた。
彼女は兼業主婦。
病気に赤ちゃん…
今だって忙しい筈。
これからはもっと…
今日はドライブへ誘っては来たが、チビも連れてのこと…
単なる暇つぶしなのかもしれない。
もう2人で会う気なんてないよな…
「アタシって…冷たいから…」
あの言葉がよぎる。
突然酷く胸が締め付けられた…
と同時に、今日の外出にいい顔をしなかった妻の事が思い出される…
「それじゃ…」
「うん、じゃね」
自分の中の気持ちが理解出来ぬまま、彼女の手を、堅く握り締めた…
しかし、彼女は…
俺の手を弄ぶだけだった…
握り合うという感じではなかった…
「おじちゃん!」
チビが手を伸ばす。
俺は左手でチビの手を握り、右手では彼女の手を握り締めたまま…
何にだろう…?
彼女と離れねばならないこと…?
彼女が手を握り返してくれないこと…?
妻のところに帰らなくちゃいけないから…?
俺は下唇を噛み締めていた…
手を離す…
彼女の車を見送る…
『またね』
は言わなかった。
『また』がある気がしなかったから…

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