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この時、この操作をしなければならないのが、もどかしかった…
早ければ、彼女の旦那が帰って来てしまうかもしれない時間だ。
そうなると、当然彼女は電話には出られない…
そう思いながら、彼女に電話をした…
もう聞き慣れた、彼女の携帯の呼び出しメロディ…
頼む…
出てくれ…
話がしたい…
怒っていないか確かめたい…
………
『只今電話に出ることが出来ません…』
クソッ…！
しつこく掛けたくはなかった。
いや、掛けることは出来なかった。
ウザイ、と思われるのが怖かった。
俺が、今話せる、いや、言える言葉は
『ゴメン』
それだけ…
たったそれだけ…
ただそれだけなのだ…
他に、話題も何も浮かんでいなかった。
彼女の返答の予測もつかなかった…
だから、その後の会話が、全く想像出来なかったのだ…
『アタシって…冷たいから…』
数日前の、あの言葉が、耳に残って離れていなかった…
……………
結局、彼女と連絡は取れぬままその日は終わった…
……………
それから数日、俺はこんな形で、電話が繋がらなかったことが、気になって仕方なかった。
彼女はきっと、いったい何の為に電話してきたんだろう？そう思っているに違いない。
でも俺が電話をしたのは
『ゴメン』
が言いたかっただけ…
取り繕いたかっただけ…
只の友達なら、ドタキャンしたくらいで、俺はそんなに気にしただろうか…？
取り繕いたかったのは、失いたくない存在だから…？
それは何故…？
ついこの前に、もう最後にしよう…
そう思った瞬間があったのに…
俺はどうして取り繕おうとする…？
多分彼女は、それほど気にしていないだろう。
彼女にとって、俺など、とるに足らない存在だろう…