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?…好き…?

第19章 産休…

○○駅に向かって歩く。
行く場所は他にない。
帰る場所も他にない。
分かっている。
だから、歩いている。
帰らなければ…
彼女と同じように…
俺には家族がある。
大切な宝物が。
いったい、何を考えているんだ。
何をしているんだ。
俺は…?
………
それなのに…
足が進まない…
感覚的には、何時もの倍も時間が掛かっている気がする…
そしてまた、彼女が頭に浮かんでくる。
土曜日お決まりのパターンで、母親が娘を保育園に迎えに行って、面倒を見てくれているからとはいえ、ほんの僅かな時間が自由になっただけの彼女。
その僅かな時間を、彼女は俺と、買い物をして過ごしてくれた…
確かに、彼女は買い物をせざるを得なかっただけ、かもしれない。
その買い物をするのに、一人より、話し相手が居れば、退屈しのぎになる、ただそれだけ、かもしれない。
それでも、彼女は俺と一緒に居た…
退屈しのぎの話し相手だろうと、荷物持ちだろうと、彼女は俺と一緒に居た…
何だか、良いように考えようとする俺と、不安で仕方ない俺とが、混在している。
頭の中では、彼女は俺と一緒に楽しそうに過ごしてくれた、と考える…
でも、心のどこか、気持ちは、俺でなくて良かったんじゃないか、別に居なくても良かったんじゃないか、と自分を卑下して、寧ろ邪魔だったのではないか、と思う…
そして、自らを卑下するならば、他にある…
そもそも、妻を裏切っている…
『アタシって…冷たいから…』
俺が彼女を、冷たいと思ったつもりはない。
だが、受け取り方、考え方次第では、彼女自身が、俺に冷たくした、とそう断言したワケだ…
ダメだ…
不安の方が、悪い方の想いが大きく膨らんでいく…
『あ~…アタシって…冷たい…』
愚かな自分に…
どうしようもない俺に…
トドメを刺された気がした…

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